馬車道制服紀行
馬車道制服詳解1998/10/02(金)<馬車道娘三面図> …9割だとちょっと反論が出るかな。8割…7割? いやしかし、ここは個人的な嗜好も多分に影響するところだからして。むむ。まけにまけて4割5分! 4割5分で手を打とう。 馬車道の魅力の4割5分はその制服にあると言ってもいいでしょう。清楚な袴、可愛いリボン、ひるがえる振り袖、そうした全てが我々の目を引きつけて止まないのです。 何かを正しく愛するためには、その対象を詳しく知らなければなりません。絵描きの端くれとしては、なおさらです。とはいえ店内でスケッチを始めるわけにもいきません。尾高はじっと観察を続けました。 只の変な人ですか? ・着物 矢羽根紋の入った着物です。衿元から覗いている赤い布は着物の裏地のような気がしますが着物の構造をよく把握していないので間違っているかも知れません。つまり、推測で描いた袖口の内側も何かが違うことでしょう。 ・襷(たすき) 紺色のたすきです。背中側で×の字に交差させ、縛っています。着物の袖は邪魔にならないように、たすきを通して横に垂らされています。 ・袴(はかま) はかまの後のコブは、下帯のふくらみです。はかまを履く時は先に下帯をつけます。その上に引っかけるようにしてひもを結び、はかまを固定します。はかまの上にちらりと覗いている赤いモノが下帯です。 ・ブーツ 4cm程の高さのヒールの、黒い編み上げブーツです。 ・リボン リボンは、簡単に着脱出来るカチューシャになっています。髪の短い人でも装着が可能です。 ・カラーコーディネイト 着物のカラーには紫、緑の二種類があります。着物、リボン、袴は同じ色で統一されます。 着るのにそれなりに時間のかかりそうな、こんな制服を採用している馬車道のこだわりは、やはり尋常なモノではありません。効率優先の世の中では往々にして排除されがちな考えです。が、そうした情熱こそが、人の心を動かし感動を生み出す原動力なのです。 熱弁を奮っても、只の変な人ですか? 矢羽根紋55の秘密1998/09/14(月)馬車道の制服で、まず目を引くのが、着物の矢羽根紋です。 弓矢の羽根を意匠化したこの模様、紫と白のコントラストがきりっと引き締まった雰囲気を与え、なんとも心地よい緊張感を醸し出しています。 ですが、この矢羽根紋には重大な問題があるのです。そう、手書きでいちいち描きこむのがバリ面倒臭い(;;) 絵描きの敵と言えましょう。 さて、多くの絵描きを苦しめてきた矢羽根紋、実際にはどのような模様なのでしょう? ちょっと観察してみましょう。 右図にあるのが、きものの着付けの本でよく見る、図案化された矢羽根紋の図によく使われている意匠です。 羽根模様を、紫と白で交互に繰り返しています。色の配置としては一松模様の変形といった感じです。 尾高は、これが正しいデザインだと思い、最初のらくがきはこの意匠で描きました。 ですが、実はこの意匠は、重要な点で本物と相違があるのでした。 本物の模様は、左図のように矢羽根の向きが、行によって互い違いになっているのです。 「↑↑↑↑」ではなく「↑↓↑↓」となっているのですね。 他の絵描きさんのページを探索していてこの違いに気付きました。馬車道で使っているお皿もこの意匠です。次は間違うまいと心に誓う尾高なのでした。 …と、ここで終わるかと思いきや、まだ続きがありました。 後日、馬車道に行った際、目を皿のようにして観察したところ、 「あれぇ?」 どうも、この意匠も微妙に違うらしい。 馬車道の制服の矢羽根紋は、正しくは、右図のようになっているのでした。 矢羽根の向きは「↑↑↓↓」です。 ううん。奥が深い。 図書館で借りた和裁の本にもこの意匠が紹介されていました。これが正式な矢羽根紋のデザインであるようです(矢羽根紋の複数あるバリエーションの一つという可能性もありますが、これに関してはまた後日調査予定)。 たかが矢羽根の向きと侮るなかれ、なかなか雰囲気が違って見えるものです。 馬車道の制服は「↑↑↓↓」。お間違い、なきよう。 |